色々話 小型船舶登録3

月影 蘭

2010年08月31日 11:46

 今回は小型船舶登録時にご注意願いたいことを。
 前回ご案内した各種登録、JCIという役所への申請ですので手数料がかかります。登録内容と対象船舶の長さ・総トン数で金額が変わりますので、申請前には一度JCIや私達海事代理士にお尋ねください。
 それから、売買や贈与により小型船舶を入手された場合は新規登録や移転登録をするのですが、お譲りする方も入手された方もぜひに気をつけていただきたいのが、譲渡証明書と印鑑証明です。
 お譲りする方は、譲渡証明書を作成して印鑑登録してある実印を押し、印鑑証明とともに小型船舶をお譲りください。印鑑証明は交付後3ヶ月以内のものですよ。譲渡証明書記載の住所と印鑑証明の住所が異なる場合はこの違う住所のつながりが分かるように、住民票又は戸籍謄本も併せてお渡しください。
 入手される方は、先方の譲渡証明書と印鑑証明があることを確認してから登録の申請をしてください。
 ここ最近インターネットなどで中古艇の売買がよく行われるようになりました。今さっきYahooのオークションを覗いてみましたが、300隻近くが登場してますね。金額もまちまちですが中には1200万円超、なんてスゴいのが載ってたり。……誰かが買うんですね、これを。
 ともあれ、この相手方のお顔の見えない売買で時折問題になるのが、譲渡証明書と印鑑証明の欠落・不備で買い手の方の移転登録申請に支障が出ていることであります。
 購入後、売り手の方との連絡が取れなくなり譲渡証明書や印鑑証明がもらえないとか修正等をしてもらえない事態が生じて登録申請時にこれらを併せて提出できない。困りました、どうしましょう?
 最悪、どうしても売り手の方との折り合いがつかなければ、裁判所に譲渡証明書等の給付訴訟申立を行いその後裁判所から出される判決書を譲渡証明書等の代わりに提出することになります。
 登録ができなければせっかく手に入れた小型船舶、乗り出すことができません。裁判所の手続も時間がかかります。売り手の方には、買い手の方にご迷惑とならないよう譲渡証明書と印鑑証明、きちんと揃えてあげてくださいね。
 で、売り手=所有者とは限りません。譲渡証明書・印鑑証明は所有者さん〔登録されている方です〕の名前で記載されているものか、買い手の方もしっかりご確認ください。
 所有者の確認は、JCIに登録事項証明書の交付申請することによって可能です。土地・家屋の登記事項証明書のようにどなたでも申請はできます。
 譲渡証明書は『公文書』です。実印がしっかり押してあるか、訂正箇所は実印の訂正印が押されているか、なども厳密にチェックされますので作成される方は慎重に。

 最後になりましたが、私も税理士でございます。税務上の注意点を。
 売買の場合の売り手の方について。お譲りする小型船舶が事業用であれば別ですが、そうでないなら所得税法上『生活用動産』に該当するため、頂いた売却代金には所得税はかかりません 買い手の方には何も生じませんね。事業用として購入されたのであれば、中古ですから耐用年数の見積もりが必要になるかと。
 贈与の場合。タダであげるのも贈与ですが、査定価格とかいわゆる時価に比べてうんと安い金額でお譲りした場合も、差額相当分は贈与になります。
 お譲りする方は上記売買の売り手と同じ。貰う方、場合によっては贈与税の申告をしていただくことになります。
 贈与時の時価〔又は上記の差額相当額〕から基礎控除110万円を差し引いた残額に対して贈与税がかかります。残額が100万円までなら10%の税率です。贈与のあった年の翌年2/1から3/15の間に申告してくださいね。
 なお、お譲りする方が法人〔会社〕、要するに会社名義の中古艇である場合には贈与でなく所得税法上の『一時所得』に該当します。

 総収入〔船舶の時価〕-船舶取得のために支出した金額〔あれば〕-特別控除額〔最大50万円〕

この計算で出るのが一時所得、確定申告の際はこれの1/2が他の所得と併せて課税対象になります。

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