ウチの『黒王』 12
黒 王 だ。
知ってるか?
飼われてる動物って
人間の言葉、少しは
分かるんだぜ。
ウチん中で人間と
始終一緒にいるとな、犬や猫も何だか
人間ナイズされちまう。
魚や虫は知らんが、ヘビやワニなんかは意外と頭が良いらしいからな、人間の話、ジーっと聞いてるかもなぁ……。
ボスに『ブサイク』だの『バカ犬』だの言われると、
腹立つからな、俺も。
横向いてるよ。お手もおかわりもしない。
散歩の道順がボスの都合で変えられるのも腹立つな。同じくボスの都合で飯の時間が遅れるのも。
こういうとき、俺はボスの後ろに回って
膝裏頭突き。若しくは両前脚で
膝裏プッシュ。
『このヤロッ!』と言いつつ、ボスは
崩れるぞ。
ざまみろ。
で、このボスがまたよく
しゃべるんだ。
仕事中はもちろん、仕事してなくても俺に、家内外の草木に、晩酌中ニュースやDVD相手に。
俺が言葉を覚えるわけだ。ボスのしゃべりがこの家の
BGMだもの。
でさ、人間の言葉そっくり
真似する小鳥、あいつらスゲぇよな。俺もしゃべりてぇなぁ……。
ボスが見た話。
日本平動物園内に何だかよくしゃべるインコだかオウムがいるらしい。
そいつのすぐ近くに毎日自販機ジュースのトラックが止まる。そいつが言うぞ。
『バックシマス、ピッ、ピッ、ピッ』。他にも園内放送真似したり、何セおしゃべりらしい。
ボスの
おふくろの友達の飼ってたインコの
ピーちゃん〔よくある名前だ〕もキョーレツだったとか。
ブルーグレーの
こきたないヤツだったそうだが、誰も言葉を教えないのによくしゃべったそうだ。
その家は
魚屋。店先にカゴに入れて吊るされていたそうだが、客が来るたび
『アリガトウゴザイマシタッ!』。買い物する前から言ってる。
旦那が晩酌、友達さんが『あんたボチボチにしときなよ』と小言を言えば、そのすぐ後から
『ノミナ、ノミナッ!』 同じ親から生まれたヒナをもらった家では、ウンもスンも言わなかったそうだ。
この魚屋の家族、店も当然にぎやかだが、家族も輪をかけてにぎやか。だからピーちゃんもにぎやかになったんだなぁ。
音でも声でも、繰り返し聴いてりゃ人間ばっかじゃねぇ、
動物も覚えちまうんだよ。
どうせなら、
心地イイ音や声、聴いてたいもんだぜ。
もうじき、
やっと秋だなぁ。
虫の音が朝夕イイ感じだ。
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