ウチの『黒王』 3

月影 蘭

2010年08月07日 15:01

 黒 王 だ。

 俺はボスが台所に立つときは、敷いてあるキッチンマットに寝そべる。ボスの晩酌が始まると、ボスの足元で待機だ。忠義心はもちろんあるさ、だが、こん時ばかりはそれよりもっと重大な目的がある。

 上からいろんなモンが落ちて来るんだよ。いつもの餌とはまた違うヤツがさ。
 俺たちには満腹中枢ってのがないらしい。ついでに味覚もほとんどない。
 よく聞かねえか?餌をいくらやってもまだ欲しがるだとか、人間の食うモンなんでも食っちまうとか。
 腹いっぱいってのを知らなくて、味もろくにわかんないんだから、何でも食っちまうわけだ

 こないだは生シラスが落ちてきた。初めての食感だったなぁ……。

 
 ところで、人間、ってのは一体何歳まで生きるんだ?せいぜい15,6年が関の山の俺たちからすりゃ、110歳だ、113歳だなんて長い時間、考えられねえなぁ。
 で、だ。そんなに長生きしてりゃ体もどっかまいるだろう?ボスみたいに自分で掃除、洗濯、買い物、料理……できんのか?今ニュースじゃ、そんなすげえ歳の人間が何十人もいないって騒いでるよなぁ。
 
 ふぅーん…

 ……犬の俺でもに思う。多分人間たちだってに思ってんだろうが。言わないだけでな。

 
 何十年も『生きたまま』だったり、小さな命を大人のエゴで傷つけたり失くしたり。昔からニュースってのはこんなのばっかり流してるのか?

『生』だ『死』だ、どっちにも人間は鈍感になっちまってるように見えるが、
違うか?

 

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